・深草小夜子「悪魔の皇子 アストロット・サーガ」(角川ビーンズ文庫)
こういうのも女体化ネタっていうのかしら……よくよく考えるほど倒錯的。でも嫌いじゃない。登場人物紹介のところから「品性下劣」とか書かれちゃう主人公ってどうなんだと思いつつ。
デビュー作って、「これが書きたいんです!」って勢いのあるもん勝ちかもなー、と感じました。台詞がやや大仰で芝居ががってるのが、私は気になったけど、これはこれで味なんですかね。
・沼田まほかる「九月が永遠に続けば」(新潮社)
ほとんどの登場人物が報われない話、でした。文章は読みやすいし、途中までしっかりサスペンス風な分だけ、ラストが消化不良。一番魅力的な娘ちゃんが死んでしまった時点で、ああ……がっかり。因果な人間関係をこれでもかと設定してあるから、こてこてのハッピーエンドには絶対に持っていけない構造なんですけどさ。
・谷川流「鈴宮ハルヒの溜息」(角川スニーカー文庫)
みくるビーム!
というのだけえらく印象的な。
みくるって、漢字なら「未来」って書くのかしら。未来人未来人言ってるし。
・北野勇作「ハグルマ」(角川ホラー文庫)
個人的な悪夢の中に引きずり込むような書き方はすごく上手い。
でもそれが気持ちいいわけではないのです。
不条理ホラーと混沌ホラーは似て非なるものですね。
・葛西伸哉「パメラパムラの不思議な一座」(ファミ通文庫)
芸人もの、旅する一座もの、ってところで手に取ったのですが。
女の子みんな可愛いのですが。
「そうくるか……!」というオチで、今一歩はまれませんでした。パラレルワールドネタよりも、あくまでファンタジー世界の枠の中で展開する話が見たかった。
続編を想定して書いてるんだろうな、というのが露骨にわかるのも。
でも、日本食を食べる主人公の戸惑いは楽しかったです。そうか、海苔は黒い紙か。
・馳星周「M」(文春文庫)
期待するほどエロくはないです(それだけか)。
・西加奈子「こうふく あかの」(小学館)
あ、うまくつなげたなぁ、「みどり」と。
単品として読むより、二冊読んだほうが絶対「こうふく」になれます。
自分をいい上司に見せようとせこせこ小細工する主人公は、決して素直に愛せないけど、でも憎めない。空回ってるのがあからさまに透けて見えて。
・西加奈子「きいろいゾウ」(小学館)
「みどり」「あか」だけじゃ足りずに、「きいろ」も引っ張り出してきたよ。三冊並べると非常にビビッド。
いきもののにおい。ざわめき。ささやき。
犬や虫やチャボや庭の植物。人間でない彼らが勝手に、自由に、生きる世界。その世界と調和を保ちながらのびやかに生きているツマさんとムコさん。
完全に完璧に満たされたものが、ぐらりと揺らぐ瞬間の怖さ。西さんの作品の魅力の芯はそこにあるんじゃないかと、いつも感じる。どうしてそのままでいられないの、と歯噛みしつつ、先を読むことを止められない。
「欠けていってるから、月。大丈夫ですよ」
ムコさんの台詞に象徴されるように。すべては変わることを余儀なくされていて。それがいいことでも悪いことでも。流れに乗って、一巡りして、また元の場所に帰ってくる。
離れても、また繋がって。そのたびに苦しんで、「この人が必要だ」と想いを深めて。
ほんとうに、帯に書いてあるとおり、「小さな夫婦の大きな愛の物語」だ、これは。
いろいろ謎めいた仕掛けもあって、読むたびに「これはこういう解釈でいいんかなぁ」と首を傾げつつ読んでしまう。
素直におもしろかったのは筋肉マンのどんじゃらネタ。
猪木といい、筋肉マンといい、西さんプロレス好きなんですか。
・桜井鈴茂「終わりまであとどれくらいだろう」(双葉文庫)
外人口調でso cool!と叫びたくなる小説。
なんだろう。とにかくひたすらかっこいい。スタイリッシュな人が出てくるわけでもないのに。小道具使いがおしゃれなわけでもないのに
登場人物たちすべてを、作者は愛していて、それと同じくらい突き放しているんだ、みたいな。安易な救いなんて与えないくせに、でも「どうにかなるんだろう、しなきゃいけないんだろう」と自然に思わせる結び。
癖のある文章(わざと、なんだろうけど)も鼻につかなくて、この作品はこう語られなくちゃいけないと感じる。ビートの速い低音がずっと流れてるようなリズム感があって、音楽的な文体ってこういうもののことをいうのかな。一歩間違えるとうざい、ださい、って思われそうなんだけどねぇ。きわきわの淵でかっこいい、に留まっている。と思う。
小説で、長編じゃなくて、群像劇で。
この縛りの中で、私的には最高に近い形のものが読めたと思ったのです。
・久美沙織「精霊ルビス伝説(上)(中)(下)」(エニックス文庫)
冒頭の祭りのシーンが読みたくなって、再読。
ヒーローと、彼を庇って死んでいく幼馴染の関係に、「BL臭がする……」と思った瞬間、自分は腐女子として生きていくんだと覚悟を決めました。
この話、何度も読み返してるけど、そんなこと思ったの今回が初めてだったのよぅ……。
しかし、そんなヒーローに駆け落ちを強要するルビスちゃんは可愛い。気の強い、無鉄砲な、それでいて乙女らしい一面もちゃんと持ってる女の子を描かせたら、久美さんは無敵だなぁと思う。
それにしても、いわゆる「最後の戦い」の描写をばっさり省いてしまうのは、ものすごい大胆な作りだな、と改めて思いました。もしかしたら、最初はちゃんと書いてたけど、ページ数の予定で入れられなかったとか……?と思ってしまうほど。
まぁね。タイトルからして「伝説」だし。あのドラクエのロト三部作に続く神話だって設定の物語なんだから、それでもいいのかもしれない。
そういう枠を与えられた上で、ここまで奔放に創作しきるのは、作家としての気骨を見るようです。えらそうな物言いをすれば、本当いい仕事しはるわー、と。
・久美沙織「小説 エマ1・2」(ファミ通文庫)
その「いい仕事」っぷりを引き続いて読みたくて、お次は「エマ」です。
やっと原作の漫画に触れたので、比べながら読めるわーとわくわくして。
うん。いい。いいなぁ、とにやにやしっぱなし。
半分くらいはノベライズ版のみの創作というか。漫画では省かれたところを丁寧に埋めていくような。逆に、「あれ、漫画でもあったんじゃないこんなシーン?」と思い込まされてしまうような。ないんだけどね。それくらい自然。
どうして2巻で打ち切りになるかなぁぁ。
コバルトさんではヴィクトリアンなお話が流行?と聞いたことがありますが、なるほどね、ちょっと魅力がわかった。
時代物の勉強をするのも楽しそうだな、と思いました。
・さとうさくら「スイッチ」(宝島文庫)
日本ラブストーリー大賞が妙に気になってきたじゃないか。
これを「ラブストーリー」というのかどうかもわかりませんよね、という。リアルで寂莫とした、26歳フリーター処女ヒロイン。
不器用さとかかたくなさとか生きにくさとか、ね。テーマはそっちのほうじゃないの? ロストジェネレーション世代のための小説といってもいいし。全編ひたすらテンション低いんですけど、いつも空が曇ってるようなイメージなんですけど、妙に引き込まれて一気に読めてしまうのがすごい。相手役の男も決していい男じゃないよなぁ。家具マニアのサル男。でもこんな人が住むとこない、とか言ったらつい家に入れちゃうかもなぁ。
……入れないか? 入れちゃうかも、って思えるか思えないかが、ヒロインと読み手の距離の差か。それがそのまま、この本を「面白い」「面白くない」って思う基準にもなりそうです。要するに、だめんずうぉーかー資質があるかないか。
・雨宮処凛「ともだち刑」(講談社文庫)
変に過激じゃないところがリアルないじめ小説。です。
小説の中なんだから、って扇情的に描いてもよさそうなところをあえて抑えた筆致で。それでもやっぱり主人公はつらいんだ、と共感できる描き方で。
どれだけ時がたとうと、怒りも恨みも永遠になくならない。自分の核になって凝り固まる、という感覚はわからないじゃない。怖いし、悲しいし、前向きではないけど。
スガシカオの「ドキドキしちゃう」って歌が思い出されました。
・木原音瀬「FRAGILE」(B-Prince文庫)
岡山オフの自分土産がBL本てどうなの。
「牛泥棒」で油断していたら、「WELL」の時と同等以上のショッキング鬼畜ストーリーでございました。愛とか芽生えないでしょ、これ。
受けさんは卑劣な小心者だし、攻めさんはイっちゃってるし。希望を与えては打ち砕き、ラブがあるかと思ったら裏切られ、最後には殺しあおうとしちゃってますよ……?
こんなひどい目に遭うのが女の子だったら、とても読めたもんじゃないんだろうけど。BLはねぇ、どっちも男だから大概のことには耐えてくれ、とエールを送りながら読めるのがいい。らしい。私には。
しかし新レーベルの創刊ラインナップにこんな話入れてくるって、なかなか尖ってるね。
・佐野しなの「リヴァース・キス」(電撃文庫)
再読。相変わらず楽しい。テンポいいなぁ。マネしたいなぁ。
この作者さん、男の人かな? 女性だったらものすごく嬉しいんですけど。さりげない下ネタがとても愛せます!って伝えたいの。
そろそろデビューして一年たちますが、次の文庫は出ないのかなぁ……これの続編が読めたら一番いいけど、違う話も読んでみたいし、個人的にものすごく期待してる新人さんです。って、そういうことは編集部なり、作者本人に言わなきゃいかんよな。
ファンレターなるものは今まで二回しか出したことありませんが、三回目があるならこの方で。
・戸梶圭太「下流少年サクタロウ」(文藝春秋)
給食費未払い問題。学校裏サイト。赤ちゃんポスト。モンスターペアレント。
時事ネタが戸梶作品に登場するのをひそかに期待してるのは、なんというか、黒いなぁと。でもほんと素早く作品にするんだ。これ以上ないほど毒々しく。
食品偽装問題もあった。カルト宗教ネタもあった。飽和状態の刑務所ネタ、死刑存続論、医療ミス、ネットでの集団自殺、少年犯罪ももちろんあった。
デフォルメされているのはわかっていつつ、戸梶本を読むと、現代っておかしいよな、と時々ぞっとする。また黒いこと言うけど、次は「となりのクレーマー」ネタとか読みたいです。
はちゃめちゃに見える戸梶ワールドの中でも、自業自得、因果応報は唯一のルールでカタルシスだから。
・本谷有希子「ほんたにちゃん」(太田出版)
「hon-nin」の連載が一冊にまとまりましたー、祝。
本谷さんの作品に初めて触れたのが、これ。饒舌で自意識過剰でありつつ自虐的な女の子を書かせたら、本谷さんは現在日本一ですよ。おろかわいい……か。新たな萌えか。
たびたび「うひー」つって場面転換するのが妙に微笑ましいよ。主人公がやってることは相当痛々しいんだけどね。
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